勉強

歯科医師免許は大学卒業後、国家試験に合格して得られます。最近では国家試験が難しくなっており、試験範囲も広くなっているので、学生さんも大変だと思います。

 

しかし、勉強は歯科医師免許を取得したあともずっと続きます。

研修医時代にも勉強しますし、勤務医時代にも勉強します。開業後は、歯科の勉強だけでなく経営の勉強も必要です。

 

専門書を読む、最新の論文を読む、学会発表を聴く、講習会や研修会に参加する、知り合いの歯科医師と勉強会を開くなど、勉強方法はたくさんあります。

 

なぜ歯科医師に勉強が必要かというと、それが明日からの診療に役立つからというのはもちろんですが、私の場合は恐怖心から、というのもあります。

 

医師のように命に直結する事態というのは開業歯科医師にはあまり起こりませんが、我々の治療行為が患者さんに何らかの結果をもたらすという本質は変わりません。

 

かけがえのない人体に何らかの操作を施すというのは、実に恐ろしいことです。

麻酔を打ったらショックで血圧が急降下するんじゃないか、抜歯のあと血が止まらないんじゃないか、治療した歯に激痛が走っているんじゃないか、かぶせ物は大丈夫だろうか…。毎日の診療の中で、私の頭の片隅には常にこういった恐怖心があります。

 

ほとんどの場合そのような事態は起きないのですが、学生時代の解剖実習で感じた、「こんなにも複雑で精巧で美しくデリケートな人体に、私ごときが何かをしていいのだろうか」という畏怖の念が頭にある限り、この恐怖心は消えることはないでしょう。

 

その恐怖心を少しでも和らげるため、私は勉強しているという面もあります。

言い換えれば、知識や技術をできる限り高めて様々な症例に適切に対応できれば、心配なことや不安なことが起きる確率を低くすることができるのではないか…そう考えているのです。

 

また、大学医局員時代に、知識も技術も太刀打ちできないような、尊敬する先生が熱心に勉強している姿を見て、これだけの先生がまだ貪欲に勉強している、よほど勉強しないと一生追いつけないぞ…と危機感を持ったのも、勉強を続ける理由のひとつです。

 

もちろん、新しい知識を得るのは楽しいという単純な動機もあるのですが、プロフェッショナルとしては、それだけではダメなんだと、私は思います。